長い年月多くの人を魅了し続けるメーカー、トライアンフ。
近年ではオリジナル派に加えて、チョッパー等のカスタムベース車としても人気を博しているオートバイです。

今回の依頼車はおよそ40年前の車両ですが、約100年の歴史を持つ同メーカーの車両としては
比較的新しい?年式に数えられるモデルなのかもしれませんね(笑)。

オリジナルのイメージを周到しつつ、オーナーさんの好みのカラーリングで仕上げるのが今回のオーダーです。

僕より、長い期間この世に存在する品に新たな命を吹き込むが如く、自分の仕事に取り組みたいと思います。
【TRIUMPH TR6】
年式を考えると当然ですが、このまま塗装できるコンデションではありません。
キズ/ヘコミは勿論の事、錆やスチールの割れ/溶接部の剥離など、この時点で確認できるダメージが数多く見受けられます。
加えてあまり程度の良くない塗装歴も有るようなので、旧塗膜を剥がしてみないと下地の正確な状態は把握できません。
オイルタンクも作業対象なので、まずは洗浄から。
塗装作業にとって油汚れは大敵なので、よ~く洗浄します。
段取りは結果を大きく左右する大切な作業工程です。
タンクの旧塗膜を削り落とすと、全面総パテの状態です。
品物を拝見した時から、表面全体が波打っていたのでここらへんはある程度想定内です。
サンドブラストを使い、隅々まで旧塗膜やパテ/錆などを除去します。
剥離によって無垢の素材が現れると、隠れていたトラブルや問題箇所が姿を現します。
レストア系のペイント仕事の場合こういったトラブルは付き物なので、慌てず騒がずオーナーさんに現状の報告を行い
適正な方法で対処いたします。
スポット溶接が剥がれて使えなくなっていたサイドカバー裏の小物入れも、再度溶接し直して実用可能な品にします。
板金の粗だしや溶接工程の様子。
そして、細かい歪みなどを取り除く作業へ。
全ての修正作業が終わったら、下地塗装を施し乾燥室へ。
おっと。下地塗装後にオイルタンクに微妙な歪みを発見してしまいました!(○で囲んだ部分)
当然自分の仕事は各作業ごとにチェックはしていますが、所詮僕も普通の人間なので完璧は有り得ません。。。
しかし、オーナーさんからのご期待や仕事へのプライド、仕上がり等を考えると、
このまま作業を進める事は考え難いので、再度下地作業をやり直します。

ある意味この段階で発見できた事はラッキーで、この先数工程進んだ後に発見した場合は
更に多くの時間と労力を費やして、リカバーする事になります。

やるかやらないか?職人としての方向性が問われる分かれ道みたいなものです。
無事オイルタンクの再下地も済み、気分晴れ晴れで次の工程に取り組んでいます。
ネガティブに気になる事を抱えたまま、仕事を進めても良い結果に繋がるとは思えませんしね。
ん~良い下地です(笑)
最初の一色目。深みの有るブルーに塗り上がり!
下地処理の効果で質感が変わっているのが分ると思います。
基本的なライン取りやペイント色等は作業前に既にオーナーさんと打ち合せ済みですが、
有る程度作業の進んだ段階で、更に細部の仕様を考えます。
お借りしている資料を元にそのメーカーの特徴やクセ?などを上手くフィードバックした一品に仕上げたいと思います。
シンプルだけど、結構悩んだ塗り分け作業も無事終了し、乾燥工程へ。
仕上げにビカッと磨き上げましょう!
長い道のりを越えて、無事完成です。
深みの有るメタリック系ブルーとアイボリーをゴールドのラインで引き締めた塗り分けペイントと、
漆黒ブラック仕上げのサイドカバーとオイルタンク。
雨や泥の巻上げ/飛び石等、苛酷な環境が強いられるフェンダーの裏はチップガード仕様。
組み付け後の画像を頂きました。
コンディションの良さそうな車体にピカピカの外装。まるで40年前からタイムスリップして来たみたいです。
塗り分けたイメージもスポーティさと上品さのバランスが上手く取れていると思います。

こういった車両はこの先も大切に乗り継がれていくはずなので、もしかしたら僕より長生きな車両かも知れませんね。
僕等みたいな裏方仕事の人間には、時にはこんなロマンスもモチベーション維持に必要だったりする訳です。